Under the hazymoon

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極私的走圏学習プロセス論その1

 昨日の練習で、今度は僕が被検体となって、走圏の際に遠藤老師がどこを直されているかというお話がありました。日頃びしばし直していただいてはいるものの、そこで一体何が行われているのかということについては、分かっていなかったので、非常にためになりました。
 

 熊形走圏をしている最中に、腰やら肩やらに修正を加えられつつ、歩みをすすめていくわけですが、自分で歩いているときと違って、遠藤老師のサポートが入るとその途端足にかかる負荷がすごく大きくなって、前に進むのがすごくしんどくなります。足裏もじんじん。で、今回、左右どちらも長めに直していただいたのですが、時計回りのときはまだしも、反時計回りのときだと、自分が中正と思っている姿勢よりもずいぶんバランスが悪い姿勢に直される気がするんですね。何だか傾いている感じがするんです。が、足への負荷は格段に大きい。つまり、日常の姿勢が歪んでいるので正しい姿勢にするとかえって身体がきしんで痛みが生じるということなのでしょう。痛むところは悪いところ、というのがようやくぴんと来たような。
 しかしこれ一人で練習してたら永遠に気づかないんじゃないでしょうか。自分ではバランスが悪いと感じる状態が本当にバランスよい状態だったりしたら、どの状態が正しいか自分自身では分かるはずがありません。先生に直された時点での身体への負荷による身体感覚をなぞりつつ自習するしか方法はないと思います。
 それで、では僕の場合、遠藤老師による矯正で、客観的にはどういうことが起きたのか。こういうとき、共に学ぶ仲間がいることもまた有り難いことです。なむなむ。練習後何人かに、僕どんなんなってました?と聞いてみたのです。するとだいたい以下のようなお答えを得ました。まず僕より数ヶ月後から習い始めた相方によると、「何が変わったか分からなかったけれど、足が重そうになったのは分かった」とのこと。それから数ヶ月先輩のN師姐によると、「うん、腰がまっすぐになったよ」とのこと。さらに大師兄クラスの夏目さんによれば、「腰がまっすぐになったでしょ、それで前に逃げようとするのを押さえるから力が全部下に向かったんだと思うよ」とのこと。O師兄によれば、「肩を押さえたりして上半身から動こうとするのをとめて腰から歩くようにさせてたね」とのこと。なるほど!どれもうなずくことばかりです。
 こうした要求は理屈として頭では分かっていても、さりとて自分の身体でどう実現したらよいか。理論は万人に向けて説かれるが、身体は自分だけのもの、翻訳するのはたいへんというわけです。師による指導が、もしも通り一遍の型の稽古に終わるなら、ある形を理想のものとしてただ一方的に示すのであれば、結局そのパーソナライズは自分でしなくてはならず、結局困難をきわめるでしょう。理想的な指導というのは、学習者が自分で翻訳できるように一人一人に寄り添うことでしか成立しない。一般論での理想の教育というものも同様かと思います。もっとも、時間と予算と人材の都合でそうした幸運が常にあるとはかぎりません。その意味で、今遠藤老師に習えていることはずいぶんと幸運なのだと思います。
 ところで、ここ最近、僕の理解が進んだのか(あるいは誤解が広がったのか)、長らく気にしていた走圏におけるアポリアの一つが解決した気になっているので、それを現時点の理解として記録しておこうと思います。そのアポリアとは、「腰に意識をおきつつ、足に力を入れることの乖離」をどう解決すればよいかというものです。最初の頃、これが分からず、李老師に聞いてみるとそのうち分かるから、と言われて、そのうちしたらホントに分かったぞ、と喜んでいるわけです。
 えーと、続く。