Under the hazymoon

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穿掌一撃天下を穿つ

 7日目です。今日は単操練習について学びました。熊形走圏、龍形走圏、単換掌と練習した後、単換掌の単操、発勁の単操作が、両手の撞掌、片手の撞掌、挑打、反背錘の母掌と単操、そして88式はいよいよ次回で最後というところまで。
 

 まず単操に関する定義と位置づけについてお話がありました。単操とは読んで字の如くで、八卦掌の掌法や套路の一連の複雑な動作から、一部分を取り出してその動作だけを反復練習することなのだそうです。で、一通り掌法や套路ができるようになったら、自分の体や心と適し、好みに合う動作を一つ二つ抜き出して、単操として毎日練習を行うことで、その動作を自分の得意技とすることができるとの由。穿掌は八卦掌の特徴を代表する技で、「一個穿掌穿天下」とも言われるけれども、もし蓋掌を得意とすればその人は「一個蓋掌蓋天下」、反背錘を得意とするなら「一個反背錘打天下」と賞賛されるだろうと。もちろん、そうした単操を練習するのは初心者にはまだ早いそうで、その時間を走圏に充てた方がよいようです。
 もっともできてないところを補うためにも単操練習を行うわけで、最初に単換掌の扣擺歩の単操を行いました。「手脚斉到方為真」ということで、手足(というか身体全体)が同時に動くことが、その変化の探掌や穿掌でも重要なわけで、身体の中正を保って馬歩をしっかりし、足は扣擺歩をしっかり、手は身体と一緒に動くという、三つのポイントを練習しました。ええと、もちろんできなかったですが。
 撞掌の練習においてもその要求は同じだったわけですが、やはり難しいです。
 挑打は88式の中で何度か出てくる動作で、この練習のおかげで、88式のこの部分の動作が少し分かるようになりました。
 また反背錘の母掌と単操は反背錘自体の練習と言うよりも、まず反背錘がうまくできないことを確認した後に、単操を行って個々の動作を正確に行えるようにする、という過程を体験させたというわけです。ありがたや。
 李先生曰く、より簡単な動作ほどより難しい、と。そしていちばん難しいのは走圏ということになり、どうして難しいかといえば、走圏は上手に行うことを目的としてあるのではなく、自分の身体を変えるためにあるからで、走圏にしろ単換掌にしろ何年続けてもなかなか上手にできることはないのだけれども、そのとき確実に自分の身体は変化してレベルがあがっている、そのための練功であることをよくよく理解するようにとのことでした。 

はじめてのそうけん その5

 今日は走圏における捻りの重要性について。何よりも大事なのが身体の中正で、それはとりもなおさず含胸亀背により上にあるものを腰まで降ろし、股の上でそれを支えつつ歩くそのときに、身体がぶれない動かない、ということなのだそうです。そうすることで力が足に加わり地面をかんで歩くことができるようになると。
 そして、その際にポイントとなるのが、身体を円の中心に向かって捻って歩くこととの由。というのも、しっかり捻ることで、足が自然と正しく前に出るようになるのだそうです。身体が不安定な状態では正しく歩くことはできない、つまり正しい歩法を維持するのは身体の状態を中正に保つことで自然に行われるというわけです。もちろん、本当に「自然」に足が正しく動くかというと、そんなことはないでしょう。正しかるべき要求はすでに示してあって、そこから逸脱しないように意図的に自然に踏み行うのです。実際、走圏しているときに、足の力強さはいいが、もっと自然な歩幅で歩きなさい、という指導が(ねじり足らんよ、もでした。道は遠いです。)。この人為的な自然の構築というのが、きわめて中国哲学の伝統に根ざしていて、すばらしいです。前にちょっとだけ台湾で太極拳を体験学習したときに、同じことを感じたので、中国武術一般に言えることだと思います。長く武術をやってる人には当然なのでしょうけど。
 しかし、こうした李先生の要求は、非常に具体的かつ系統的で、僕がこれまで疑問に思っていた腰と足との意識の分散の問題とかを単純に解決してくれました。