Under the hazymoon

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はじめては龍形からもあり

ブートキャンプ二日目は初心者向け講習会パート1でした。いっぱい参加してもらえたのに会場があまり広くなくて申し訳ありませんでした。
そんな事情で、走圏は何人かで一つの円を回り、まったくの初心者の人たちは全員で、10人以上でしたか、円を作って歩いたのでした。あとで先生から伺ったところによると、伝統的な教え方では、個人での練習はやはり一人で一つの円の回るけど、先生が教えるときは、レベルの高い低い関係なく学生全員で大きな円を作っていっせいに走圏をして、先生は円の中心で各人に指導していたんだそうです。伝統的な教え方ということは董海川先師もそうされていただろう、との由。単換掌など掌法を指導する際にも同じようにしたそうです。その場合、各動作を全員で合わせて行うのだとか。なるへそ〜。
以下、昨日の内容をメモしていきますが、例によって、僕の主観が相当程度入っています。というか、あえて入れてます。講習会に参加して、李先生のアレを見た人なら、僕のまだ未熟な言葉を超えていくのは困難なことではないかと。
 

カリキュラム

  1. 走圏
    1. 龍形走圏
    2. 熊形走圏
  2. 単換掌
  3. 探掌
  4. 蓋掌

 
まったくのはじめての人にどうやって教えられるのかなーと思っていたら、これまで通り、まず八卦掌の体系全体の解説から始まったのでした。そこに通底する根本要求が養生と攻撃にあり、この二つを融合させた練功が走圏に他ならないとの由。で、まずより基礎的な養生を実現するポイントとして李先生があげられたのが、中正という概念でした。中正であることで気血が全身に充満し、その結果筋骨が変化し、力と気が完全になって、それから個別の技術の修得へ進むというわけなのです。
じゃあその中正な身体で行う走圏は、といったところで、背中は言葉より雄弁という男な設定かはともかく、細かい説明をする前にます、どういう動作かを自分で李先生の走圏をみてそれを真似してやってみて、その後どこを押さえるべきかという具体的な講義があって、もう一度練習し、それでまた……という教え方でした。まず自分でしっかり見取り稽古しなさい、ということなんですかね。
さて、それで初心者が注意すべき走圏のポイントを、上中下の三盤に分けて解説されました。どの場合でも大切なのは、中正です。まず身体の中心線が地面に対して垂直になっているように、頭や腰をまっすぐにします。平行に手を出し、身体ごと円の中心にねじり、両の手を身体の中心で一つに合わせて構えます。その際に、胸を落とし、背中を丸く張り、腰をまっすぐのばします。おきあがりダルマに頭と手足をはやしたようなもんですかね。で、その状態を保持して動くことなく、歩いていくわけですが、その際に、
上:両肩が平衡であること。
中:股が平衡であること。
下:足の運びが平行(両足の幅が一定)に動くこと。
に注意します。どうしてこの要求が大切なのかといえば、体幹部を袋として考えた場合、肩と股は袋の上と下なので、ここが傾くと袋がよじれちゃいます。足の運びが一定でないと袋がゆれてしまいます。この袋の上の方には心肺があり、下の方には肝腎があります。細く伸びている袋をねじりつつ圧縮することでふくらむようにすると、内蔵が圧迫されなくなりリラックスしてよく働くようになり、気血が養われるようになります。また袋の中のものを下に集めれば、重心が下にうつるので袋が安定します。歩く一歩一歩をそのように身体の中のものを下に沈めるように進みます。身体自体はそのまま。
正しい形は形のためでなく、見えないもののためにある、というわけです。
龍形走圏のポイントの一つを懇親会で教わりました。龍のように行うといっても、龍を実際に見た人はいないわけです。ようは、自由自在に思ったことをそのまま行えるように、何にも妨げられず開放されているように、行うのだそうです。
 

本当は恐い単換掌

単換掌については、一つ一つの動きをはっきりくっきりと練習することの他に、方と円の二つの動作が一つにまとまっていることを理解して行うようにとの由。方、四角い動作は例えば動作の方向や馬歩の姿勢など。円、丸い動作は例えば動作の回転です。
動作自体はこれで戦う技なのかと初めて見ればそう思うようなものなのですが、これはすべての技の根本なのだよと、実際にどう使うか見せてくれたのですが、あいかわらずすごかったです。うひー。とはいえそうした変化がどうして効果があるかといえば、動作自体は複雑ではないので、やはり功夫が培われていてこそなんでしょう。李先生は相変わらず動く交通事故でした。
また技の源である単換掌も走圏から生まれたんだよ、と走圏から方向を「換」えて単換掌になるところを見せてくれました。他派の走圏を太極図のように歩いてるのを見たことありますが、これだったんですね。なるほどー。
ちなみに、初学者が学ぶ場合、まず龍形走圏を学び、単換掌を学び、それから熊形走圏を学ぶ、という順序もありだそうです。
 

女子八卦掌リターンズ

懇親会の席上で龍形の手のかたちに話が及んだとき、女性については手を標準的な形でなく、まっすぐのばしたものに直されていました。おお、前に編み出された女子八卦掌の成果ですね。どうして手の形が変わるかというと、それは穿掌の型の鍛錬になっているということなんですね。だから、龍形のときだけでなく、熊形のときも手を垂直に下へのばして走圏を行うとよいのだとか。一方、一般の熊形では蟹形撞掌の形から始めます。基本要求がぶれることはありませんので、手に関しては鍛え方が違うということかと。
ところで、いわとさんは李先生から女子八卦掌の走圏練習していいよとのお墨付きが。手が長いから穿掌の効果が高いためだそーです。

自主練習での姿勢チェック

懇親会で、自分で練習していると、中正を保てなくてゆがんでいるのをどう修正すればよいのかという質問に対しての先生のお答えは、そのために先生がいるんだよ(笑)というものでしたが、なかなか会えないわけですから、なやましいわけです。自分で鏡をみながらはやめた方よい、鏡をみる時点で姿勢が崩れるから意味がないとの由。ビデオ撮影で自分の姿を撮して後からチェックする方がよいそうです。

夏は武器と料理だぜ

懇親会で、武器やりたい人手をあげてと言ったら、みんなあんたも好きねえ状態だったので、おそらく夏の講習会では武器講習も行われるかもしれません。ついでに料理教室も是非とお願いしたら快諾してくださいました。戦争と平和ですね。わくわく。
そうそう武器といえば、八卦掌では八種の走圏が八種の掌法になり八種の武器になり、と対応しているのですが、その対応武器を改めて教わりました。前に紹介した*1、学研のムックにも載っていますが*2、以下のようなものになっています。

  • 龍形:判官筆、七星杆
  • 熊形:鶏爪鴛鴦鋭
  • 獅形:刀
  • 蟹形:聞きそびれ
  • 鷹形:子母鴛鴦鉞
  • 単勾式:子母鴛鴦鉞
  • 指挿式:槍
  • 陰陽図:聞きそびれ

*1:http://d.hatena.ne.jp/nomurahideto/20071109/p1

*2:[asin:4056049645:detail]