Under the hazymoon

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ベッタベタのカンフーもの

『カンフーパンダ』見てきました。一分の隙もないベタなカンフーアクションB級大作で、たいへん満足しました。正統なるジャッキー映画の後継者がこんなところにあったとは!てなもんですよ。

主人公が食いしん坊のパンダという時点で、正統派カンフーものにはなりえないわけですが、実際、最後の戦いがどちらかといえばジャッキーチェンお得意の日常生活の中にカンフーを!アクションになっているんですね。正直、修行の時間が足りんだろーと思ったんですが、そこは『カンフーハッスル』的解決策がとられていたので、一応クリア。ホントによくできてました。
さて、たけくまメモ*1でポニョと比較されていましたが、僕も作品の完成度はパンダが上かなと思いました。ただパンダはカンフー(あるいはその手のアクション)もののお約束が分かっている方がより楽しめるという問題があります。
例えばたけくまさんが掲示板で指摘されてなお動物アニメのセルフパロディとして理解してしまっている*2主人公のパンダの親が何で鳥なのかという問題ですが、これはむしろこの手のお話の定石として実は義理の親子であるということが大前提にあって、それが動物でやってるだけに観客には明らかに分かっちゃって、それが明かされることをつい期待して見ちゃってるところをあえて外すというギャグであって、あくまでカンフーもののセルフパロディという『カンフーパンダ』として当然の演出と見るべきでしょう。これを動物アニメとしてとか考えすぎだと思います。
してみると、やはりパンダの方は対象年齢がポニョよりも上で、「おはなし」が分かるようになった年齢向けのアニメということになるのだと思います。
パンダは他にもいろいろ伏線を張って、全部それをきれいに回収して、エンディングなんかでもきちんとその後のハッピーエンド(ジョリー虎がポーのまねをお師匠様の前でしたりして、歪んだ師弟関係が修復されたことが示されているとか)まで描いてあったり、笑いとセットにして重い含蓄のある科白をさらっと語らせたりと、隅々まで楽しめるようになっていてトータルな満足感はポニョよりあった、はずなのですが、それでもポニョのいくつかシーンでその絵の描かれようにどきりとさせられた衝撃の方が瞬間最大風速は上なんですよね。宮崎駿さんの企画書を読む限り*3、どうもそういったことを自覚して作ったようで、それがすごいというか空恐ろしいのでした。

追記(8/13):義理の息子問題をあえて明かさないという笑いは、同時に本作のメインテーマである、今ここに自分が自分としていること、に通ずる重要なポイントで、あえて言及しないことで回収された伏線であると読み解くことができる、と思い至りました。出自なんか関係ない、ということでしょう。もともとけっこうゼロ年代向けテーマになっているなとは思っていたのですが、そのように読むと、最近の強者の理由を血筋で説明しちゃう週刊ジャンプ系の諸作品(ルフィとゴンはけっこう初期からだったけど、後付けで横綱級の一護やナルトまでも血筋がすごく重要になってしまい、ほとんどの作品が血統ものというおもしろいことに)と対比できておもしろいかなあ。

*1:http://takekuma.cocolog-nifty.com/blog/2008/08/post_746c.html

*2:8/12現在

*3:[asin:4000223941:detail]