Under the hazymoon

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不動明王もかんでます

サントリー美術館の「国宝三井寺展」に行ってきました。書画は妙心寺展の方がよかったけど、文物はこっちの方がよかった。仏像堪能しました。
国宝の図像もよかったけど、ちょっと薄れてて、立体になってたメインの不動明王像方がよかったかな。
それにしても、しっかりかんでますね、足。親指が立って、他の指がぎゅっと曲がってるわけです。
しっかり地面をかみしめると、もちろん親指も地面にがっちりつくわけですが、足に力が入った状態で移動しようとするとき、親指が浮き気味になります。だから「虚空を踏む」という表現にぴったりなんだと思います。
妙心寺の十八羅漢は別に浮いてないですけど、同じ足をしてるのは、彼らは歩いているところだからですね。

不動明王像の解説のところで、分かってないな〜と思ったのが、体は肥満だが手足は筋骨隆々であるとかいった説明がなされていたことです。いや、武術的な身体だと、そうなりますって。肥満じゃなくて丹田ががっつりできてるってことなんだよー。背中だって発達してるし、体幹はそのように充実しつつ、手足には力が行き届いて筋が張っているという描写なんですよね。達人の身体ですがな。
もっとも腰の部分がまだちょっと弱いし、手足も筋が目立たなくなるぐらいにふくらみが出てくると、馬貴派的には理想ですけど。しかしその場合、一般の人が見るとホントにただの肥満体になるから、絵的にはこれが理想かも。
身体論から見た仏教美術とか、一発ネタならいけそうだな。。。

伝奇的におもしろかったのが、智証大師円珍の頭蓋骨の話です。頭頂部がとんがってて、どうもそれは「霊骸」のしるしらしく、中国へ渡った際に何人かの人にそれが原因で襲われる可能性があるから気をつけるようにと注意されてるんですね。頭蓋骨をひっくり返して杯にして使用すると、不老長生を得られるそうで。リアル三蔵法師玄奘だー。
智証大師は夢に金人に出会って、それが不動明王だったわけですが、その啓示で中国に行くことにしたのですが、おもしろかったのがそのくだりが記録された初期の文章。後の時代の方では、智証大師の徳が高いから加護してやるみたいな話なのに、初期の方では、不動明王が自分は「法器が好き」なので加護してやるとなっていたことです。
きちんと解釈すればそうじゃないんでしょうけど、すでにその霊骸ネタにぐっときていた僕は妄想力をつい発動して、そっかー智証大師の頭蓋骨は不動明王も愛でる法器なのか、そりゃ狙われるわと思っちゃいました。
さらに後の方で泣き不動の絵巻物があったとき、取り憑いた化け物に付喪神がいたので妄想はさらに加速し、『西遊記』でも天界から地上に流されて人間や妖怪になったりしてるから、さしづめ智証大師は西方浄土のお釈迦様のもとで大切にされていた杯が、その霊力のおかげで、地上に落っこちた後に人間になったんだなと勝手に話を作って楽しんじゃいました。中国では動物どまりだけど、さすが日本は山川草木悉有仏性、器物が妖怪だけでなく聖人にも変じて何の不思議がありましょう。これをベースにして、仏教版聖杯探索伝奇物できないですかね。