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『虐殺器官』を読んだ夜にヴドワイゼルを

ふと思い立って、積ん読してた伊藤計劃虐殺器官*1を読みました。文庫が出たときに買ってあったのですが、冒頭の文体がジュヴナイルっぽく感じられて、それが理由というのも変なのですが、何となく読み進めることができずに放置してあったのです。文庫の解説を読むと、敢えて選んだ文体だったそうです。なるほど確かに。
読み終わった日の夜、たまたま立ち寄ったテイルズ本郷店*2で、作中で重要な役割を果たすビール、ヴドワイゼルの生に出会いました。確かにバドワイザーと全然違うこれぞビールという味でした。ベルギービールが別次元の味としたら、これは王道中の王道の味です。そりゃ本家本元ですもんね。お店の人の話では、『虐殺器官』を読んで飲みたくなったというお客さんが何人かいたそうです。ちなみにナノマシンは入ってませんでした。
このテイルズというお店では『もやしもん*3にも登場していたウルケルの生が飲める店ということで有名らしく、20日過ぎにはウルケルの生が再入荷されるので、ヴドバーと飲み比べができるそうです。うう、楽しみじゃ。
ところで、『虐殺器官』は、解説によると、作中に「虐殺の文法」が具体的に示されてないので、小松左京賞を逃したそうです。まあエディターの仕組みとか、確かに書かれているとそれはそれでおもしろかったと思いますが、それがなくても作品の価値を下げることはないと思いました。何故なら、僕は読み終わった後に、そういや「虐殺の文法」が書かれてそうな領域を自分の専門分野で想起したんですね。もちろんそれは儒教をおいて他はありません。これまた偶然にもヴドワイゼルを飲んだ日に神保町で、加藤徹『本当は危ない『論語』』*4を買ったばかりだったんです。同書には、松下村塾ってカルト集団だよねとか書いてあったりして、もちろん意図としては『論語』を正しく使いこなすことを主張しているのですが、社会を破壊する危険性が『論語』にあることもきちんと触れている。まあ僕自身前々から自己啓発セミナーくさい儒教カルトの問題は指摘していたわけですが。
虐殺器官』を読むことで、僕は僕なりに「虐殺の文法」の匂いを見つけてしまえる。そもそも「虐殺の文法」が言葉未然の器官なのだとしたら、それそのものを示すことはできないでしょう。だとすればエディターを作るか、チェッカーを作るかしかない。幸いなことに『虐殺器官』はエラーチェッカーとして僕たちに残されたのかもしれません。それはともかく、『虐殺器官』と『論語』を比べながらヴドワイゼルを飲む偶然に出会えたことは、僕にとっては幸せなことでした。

*1:[asin:4150309841:detail]

*2:http://www.tails1998.com/hongo.php

*3:[asin:4063522725:detail]

*4:[asin:4140883413:detail]