Under the hazymoon

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単勾式の力と美

数年前に習った単勾式と今回習っている単勾式では、式の順序や個別の動作について異なるものがあります。式4は動作の要求が細やかになったぐらいでしょうか。前回式7だったものを今回式5として教わりましたが、動作の方向が正方向から斜方向に変わりました。式6は前回と同じですが、前回は片足で立ちながらの穿掌が、今回は蓋掌してからステップバックに変わりました。
あと2式どうなるか楽しみですが、つい我慢できず李先生に伺ってしまいました。学生としてあまりよい態度とは言えませんが。。。すると、問題は個々の動作の変化ではなく、何をテーマとして学んでいるかにあるとのことでした。
つまり、前回は燕の動きを学ぶことに主眼が教えられ、今回は方向の明確化というより原理的なものを課題として教えられているとのことでした。全部で8つの学び方があり、まだまだ変化するそうです。つい細かい動作の違いに注意を向けてしまいがちなのですが、それではいかんということですね。そのように言われてみれば、今回は走圏の指導の段階から、確かに燕のように動くことをあまり強く打ち出されていません。言われる前に気づかなければよい学生とは言えず、反省することしきりですが、確かに個々の掌法を通じても李先生は一貫した指導をされています。
それでは前回学んだ内容と今回学んでいる内容は、どのように練習上切り分ければよいのでしょうか。やはり気になったので先生にお尋ねしたところ、その答えは、基本全部のせ油ましまし、でした。前回学んだ要求に今回学んだ要求を追加する。どんどん足していくんだよ、という強いお言葉を頂いた次第です。じゃあ僕がひいひい捻っていたのは正解だったのか。一安心しました。

それにしても李先生の単勾式の実演を見ていると、力強さと流麗さがよくもまあ同時に実現できるものだなと感嘆するほかありません。力を出し切ることと流れるように動くことは、実際にやってみると非常に難しく、力を入れれば動きが細切れになり、きれいにつなげれば力が抜けます。特に前後や左右に動くだけならまだしも(いやまあそれでも十分難しいですが)、180度から270度回転したりすると、自分でも厭になるぐらいいい加減な部分が出てきます。
それでも前回と今回と続けて李先生に習ってみると、少しずつ理解が進んできたし、それが動きにも反映されている実感があります。型を学ぶという伝統的な方法でありながら、型の意味をずらしていくことで、立体的な学びになっているのでしょうか。蛇や燕といった動物の動作を身につけるだけでなく、四正四斜のような方向といった抽象的な概念の体現が組み合わさるあたり、非常に中国的な分類になっていて、いわゆる“東洋”的な学びのイメージだけでは理解できない深みがあります。
こうして異なる学びを一つの型に上書きしていくことが、力強さと流麗さの合一を実現できる道なのかもしれません。