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八卦掌は天体の運行を模倣する?

今学んでいる獅形掌は、獅子の動きを模倣しながら、その動きの本質が球体の回転運動だと喝破しています。理想的な動きとして円運動がよく挙げられますが、現実の世界は立体ですから、球体の回転運動こそ完全な円運動と言えるでしょう。球体の回転は、どの方向どの角度にも変化し、決して途切れることはありません。
しかしこの全方位の無限の回転運動は、どのようにして身につけることができるのでしょうか。何しろ鍛錬の時間は有限です。
馬貴派八卦掌では、球体の回転運動の分解し、個別に学んだ上で、段階的に統合することにしているようです。例えば獅形掌の第一の動作について、現在の私たちはそのバリエーションを3つ教わっていますが、それはひとまず次のように解釈できるように思います。
最初は球体をそのままの位置で回転させる練習をします。両手で球体の天と地を押さえ、左右の手の上下を交替して球体を一回転させるのです。自分の身体に対して左右方向、横回転の動きです。
次には球体それ自体を移動させる練習をします。両手で抱えて球体を下に降ろしてから上に挙げるのですが、腰の回転をその原動力にするので、自然その移動の軌跡は円運動となります。
そしていったん別に行った球体の回転と移動を同時に行う練習をします。実際には自分の身体に対して前後方向、縦回転の動きをします。横回転なら球体を両手で支えたまま一回転させることは可能ですが、縦回転は人体の構造上それができません(手首を駆使するか、回転方向を斜めに傾けるかすればできますが)。そこで球体の回転を邪魔しないように身体を動かすことでそれを実現します。結果として球体は上下に移動することになります。
球体は回転と移動を同時に行い、ここにおいて球体の運動は完成します。つまり、その場にとどまりつつ回転するのでも、回転することなく円運動するのでもなく、回転しつつ円運動する。それはあたかも惑星が自転しつつ太陽の周りを公転するかのごとくです。獅形掌の球体の回転運動は、惑星の回転運動を模倣しているといるかのようなのです。
実のところ、走圏もまた天体の運行を模倣していると言えるでしょう。走圏は常に円の中心(より実戦的には後方にいる敵)を向いて歩きます。そのようにして円を一周したとき、仮に一歩も動かずその場でその動きを再現すれば、自分自身の身体が回転します。それはつまり常に地球に同じ顔を向けて回っている月と同じ、一公転が一自転となっているのです。月が地球の周りを回るように私たちは走圏している、ということになるわけです。
もちろん八卦掌の先人がそのように考えていたというのではありません。ただ星の運行と身体の運用に相似性がある、八卦掌は星の運行を体現する武術である、という見立ては、なかなかにロマンがあると思います。