走圏の歩法
岡山講習会の後ろのボードに走圏の歩法に関する幾つかの要領が載っていました*1。今回、東京では特に講義はありませんでしたが、去年の夏の講習会では解説がありました*2。で、まあその時の補足ということで、李老師から教えていただいた、
1:一歩に全身を載せて踏む
2:蹴るがごとく足を前に出す
3:地を這うように歩をすすめる
といった三段階の走圏の境地と方法について、以下に自分なりにまとめたものを記載しておきます。
第一段階は足のあげさげです。どんな境地をもって行うかというと、先人は次のような言葉を残しているとのことでした。
踩蛇頭蛇尾(蛇の頭を踏み、蛇の尾を踏む)
犁牛耕地(牛が土地を耕す)
旱地抜葱(乾いた土地より葱を引き抜く)
平起平落、密不透風(足裏を平らかにあげ平らかにさげ、風も通さぬほど地に密着させる)
一歩出した足は蛇が逃げないようにしっかり踏みしめ、続く後ろの足は葱を引き抜くがごとく力を込めて足をあげ、足裏を地面と平行に揚げ降ろしをし、降ろした足はふらふらと不安定にならずぴったり地面に動かさない。そして牛が鋤を引っ張るがごとく一歩一歩を確かに歩むといった次第です。
大木が倒れないのは幹が太いからではなく、地の下に根が広がっているからで、走圏の一歩一歩は地面に根を生やすように進めなくてはならないとのこと。
第二段階は足のすすめ方です。
踢門坎(しきいを蹴飛ばす)
脚心含空(土踏まずに空間をつくる)
繃起脚面(足の甲を張る)
足を前にすすめるとき、ゆっくりすすめるのではなく、敷居*3を蹴り破るかのように、全身を載せて前にびしっとつきだすようにとのことでした。
これはその動作自体、実践では暗腿になるそうです。相手のすねを蹴り折るってことでしょう。うひー、痛そう。八卦掌では最初の段階ではまったく蹴り技がないかのように思うかもしれないが、実は走圏の中にあるのです、とのことでした。またそのように勢いを出すためには支える足がしっかりしてないとできないので、走圏においてはむしろその支えることが大切なのだそうで。一つ一つの動作に重層的な意味が込められていて、すごくおもしろいです。これもまた中国伝統の知のあり方ですなう。
で、そうやって足を出すときには、足の甲を張って土踏まずに空間をつくり足のかたちをしっかり決め、しかも、足を降ろしたときもそのかたちを維持するようにとのことでした。蹴りにもなると聞いたからでしょうか、何だか足で牛舌掌を作ってるような印象を受けました。ここから分かることは実際に足で地面を踏む際には、かかとと指でつかむように力を入れ、かつそのことで足のかたちがかわったりしてはいけないということです。うーん、難しい。
第三段階は歩をすすめるときの状態です。
搓麻縄(麻縄を縒る)
足を前に出す際に、足裏で縄をなうかのように出すのだそうです。これを行うと足の膝下からが強くなるそうです。身体の部分でそこがいちばん鍛えづらいところなので、ここさえ鍛えられれば他の部分は簡単なのだそうです。また養生の観点からも、年を取ったときに足の強さが健康を左右するので、この練習は大切だとか。ただこのレベルは李老師でもまだ満足できるほどできていないので、きちんと教えられないとのことでした。