Under the hazymoon

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北京修行その2:馬貴派の秘伝を習う(僕じゃないけど)

練習2日目に突入です。幸いにも雨は午前中止んでいたので外で練習できました。練習はいつものようにまず走圏から始めました。その後、掌法については明日の北京の学生さんたちとの合同練習でやるので、と発力などの修正にいきなり突入。。。マジですか。
 

馬と牛

発力の型自体はこれまでに習った四つのものと同じだったのですが、僕といわとさんとではやり方を変えて練習をしなさいとの由。
僕は身体が脱開してないので、とにかく大きく前にのばすように行うようにとのことでした。注意点は、前へ前へとのばすことで、上に上がりすぎたり、力を入れて筋が縮こまるようではいけないんだそうです。僕のこうした大きく行う練習方法が馬の勁、明勁の練習だそうです。初心者はまずここから入るんだそうです。
そして次の段階、身体の筋がつながって開かれている人は、暗勁の練習に移ります。いわとさんはこっちを練習。こちらは牛の勁と言われるように、動作は小さいんですが、前に進みながら、ゆっくり長く力を出していく練習です。なるほど確かに丹田から力を出せるよう身体がつながってないと、単に力んでしまうような練習方法で、僕にまだ早いというのは得心がいきます。

単操

それから反背錘や88式にある掖掌の単操を練習しました。ここでも牛馬の別は有効で、僕はより大きく、いわとさんはより深く。で、いわとさんにはこれをさらに練習するようにと、圧掌(穿掌から入って圧掌への変化)と腕打の指導がありました。腕打を教えるのはいわとさんが初めてだと言われてました。僕も少しやらせてもらいましたがうまく行きません。これは身体の筋がつながってないとできないから、君にはまだ早いというのが分かっただろうと李先生は笑われてました。実際攻撃方法としは短打なので、現在の僕がやるとやはり手だけで打ってしまうでしょう。

涮腰

夜の練習は室内で、いわとさん向けの涮腰(サンヨウ)と転換掌の対練を行いました。
まず涮腰ですが、この練功法は、冬にお会いしたときに、これは馬貴派の秘伝の練功法で10年は馬貴派で練習したものでないと教えない秘中の秘である、と言われ、どんな動作かだけは見せていただいていたのですが、今回いきなり習えることに。当のいわとさんは、えっいいの?とかなりとまどってましたが、話はどんどん進んでいきました。
僕は通訳してたんで、側で見てたんですが、動作としては非常に簡単なもので、傍目には歩きながら腰を捻る(涮の意味)だけなんですが、やり方が複数あるそうで、とりあえず2つほど李先生は教えられました。この練功法は走圏に対する、腰の単操、といったようなもので、劉万川も于先生も年を取ってからは走圏はほとんどせず日々この練功を行って、あれだけの丹田を養ったのだそうです。馬貴の残した碑文にある董海川の「方腰」という形容に相当する身体を作るための方法で、これは現在馬貴派にしか残されていない貴重な練功法なのだとか。
ちなみに、他派に残されてないとどうして分かるのか伺ったところ、もし残っていたらきちんと丹田ができるだろうにそこまでできている他派の人間がいないから、というのが理由でした。また于先生のお話では、陳発科のお弟子さんと交流があって、そこで得た情報では陳派にもそれに類する練功法はあったそうです。が、その後を見ると、やはり他派の八卦掌と同じくどうも失伝しているようだとの由。もちろん馬貴派と陳式に同じ源から実体的に継承関係があったとかそういう話ではなく、武術の高い次元をつきつめていくとどんな流派も同じ結論に行き着くから、同じような練功法があったという構造的な起源の一致ということでした。そしてそれを理論的な話でいえば「易筋経」がそうなのだそうです。やっぱり李先生の教えてくださる易筋経の各練功法は馬貴派の重要な単操から構成されているという僕の読みは当たりでした。
さて、この涮腰についても、例によって僕がやるにはまだ早く、そしていわとさんがやるにしてもまだあまりたくさんやるとかえって身体を痛めるので、走圏を中心にしつつ付属的に行うようにとのことでした。
しかし、秘中の秘なのに、さくっと教えてくれるし、ブログに書いてもいいよと言ってくれるし、まあ理解度が低い僕が何を書いてもたかがしれているからでしょうけど、李先生はすごいなあと思っていたら、なんとこうした涮腰のような練功法まで詳細に記した馬貴派の拳譜というか解説書を書かれていらっしゃるんですね。八卦掌の書籍はそれなりに目を通してきましたが、基礎練功法まで書いてあるものってほとんどないんじゃないかと思います。実際、そこが秘伝といえばそうでしょうし。それをさっくり。。。何とか世に出てほしいものです。まあ日本語版については、僕が翻訳しても大丈夫と言われるぐらいに修行を積まないといかんわけですが(^_^;)

転換掌対練

八卦掌の実戦の要は手の変化にある、というのが冬の講習会でのお話でしたが、その基礎となる転換掌の対練を行いました。といっても、僕は木人役でしたけど。これもまた身体がつながってないとダメで、肩ががっちがちの僕にはまだまだ先の内容でした。でもできないなりに分かったこともいくつかあります。変化を自分でさぐっていくとはいえ、いちおう基本形やルールはあってそれを守りつつ行うことで双方の練習になるということなのだとか、ゆっくり行うというのは動作を単にゆっくりにするんではなく、相手の変化を感じ取って動くという手続きをきちんと行うことなのだとか、なるほどと思うところは多々ありました。推手の経験がある人からするとこういうことは当たり前なのかもしれませんが。
ところで、いわとさんについては今後攻撃の技は身体の特徴を生かして穿掌に特化して練習するように、そしてその際には蛇の風格を重んじ、蛇が変化するがごとく手が変化するよう練習しなさい、とのことでした。で、実際、転換掌のうち手をぐるぐる回すのは「蛇形転繞」と言われ、まさに腕が蛇のように動くということのようで。