腰の要求は原初に遡る?
三木成夫『内蔵とこころ』で語られている内容は、馬貴派八卦掌を始め、中国の伝統的な修養法の文脈によく共鳴する。

- 作者: 三木成夫
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2013/03/05
- メディア: 文庫
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とりあえず最近の僕の関心である、腰の要求に関してだと、直立人の脊柱ができるまでという図をみると(p.127)、見事に人類とそれ以前とで背骨のカーブが違う。
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三木は人類が直立歩行することで人としての「こころ」を得たとし、直立のために背骨のS字カーブは必要なものと肯定的に論じている。馬貴派八卦掌をはじめ中国の養生思想ではこの評価を逆転させる。背骨のS字カーブを人類以前の直線的なカーブに戻すことで、人間が失った根源的な生命力を取り戻すことができる、と考えた。なぜならまさにそのへこんだ腰のところには、腎臓があり、命門という経穴がある。そこに気を送って充実させる=へこんでいる腰をしっかり張ることが生命力を高めることになるというわけだ。
もちろん、科学的な根拠がどれほどあるか、また仮に根拠があったとしても伝統的な修養法が昔から卓越した知見を持っていたとそもそも言えるのか、などなど問題はある。ただこうした養生論や修養論の語りが、人間の身体を通じて原初の自然に遡ることで活力を得ようとする定型に収まるということは興味深い。