Under the hazymoon

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遅きとき太極拳より遅く、速きとき長拳より速く

ブートキャンプ8日目は2年以上学習者向けの易筋経講習会でした。講習会が始まる前はてっきり、経験者講習ほどたくさん掌法をやるのかなーと思ってたら、むしろ練功法をきつくやる内容に。李先生曰く練功が進めば進むほど単純なものへ進み、最後は自然と走圏の練習だけするようになるんだそうで。確かにその一端は対練のときの李先生の動きに垣間見えたような気がします。
 

さて、カリキュラムといっても新しいものは上盤のものが一つ加わっただけで(順勢掌での燕子三点水と同じ?)、後はこれまでの易筋練功を繰り返し練習しました。ただ最初の気血を集める動作をより細かい要求でやるようになりました。ここが肝心、と李先生。
単にすぐに座って馬歩をするんではないんです。大きく体を広げてから、しっかり座って、さらに手を下にのばして、すべてを下に落としてから、それぞれの易筋の動作を始めるんですね。終わるときもゆっくりと気血を逃さないように最初の姿勢に戻るんだそうです。

陰陽転換=関節の練功?

上中下の各部とは別に筋には弱い部分があって、それは関節なのだそうです。腕を喩えに出されて、一般に鍛えるときはつい腕の筋肉を鍛えてしまうが、実際に必要なのは関節を鍛えること、特に肩の付け根のところが重要である。木から伸びている枝で、幹への付け根が太くて先が細いのと、先は太いが付け根が細いのとどちらは断ちやすいか考えてみると分かるだろうとの由。
で、関節を鍛えるにも同様に気血を送って膜でくるんで筋を鍛えるのだとか。また身体を全開でのばして全身の筋がつながるようにすると気血も全部一つにつながるそうですし、筋と気は陰陽の関係にある=筋が弱いところは気が強いので、気血によって筋を練るのだそうです。こうした感覚はすぐにつかめるものではないので、長い練習を通してつかみとるように、またその原理を身体で理解したとき、そこからの身体の変化は大きいんだとか。練磨する、という言葉を李先生は使われるのですが、その意味は、苦しんで自分の身体を痛めつけるほどやるんではなく、陰陽をいかに一つのものに練り合わせるか、ということなのだそうです。まさに道教錬金術(内丹)的発想です。うー、おもしろーい。
個人的に話を聞いていて思ったのは、陰陽転換の原理を端的に体現しているのが関節の練功なのかなあということです。上中下の練功では関節をイメージしづらいんですが、関節まで含めて筋全部が盛り上がるかのようにやるということなのかなと。まあ感覚をつかめてないんで、理屈での想像に過ぎないのですが。しかし第四の部位というよりも複合的に重ね合わせて理解した方がよいのではと思っています。レイヤーの違う要素を並列させるのも中国伝統の分類記法だし。これ宿題かなあ。

易筋の原理で88式を

後半三分の一は88式を練習しました。易筋経の原理でやるように、とのことで、いくつかの動作をより明確に教えていただきました。ここの動作はこうするんだったのか、という発見がいくつかあって、より難しく複雑になりましたがよかったです。しかしまだまだ先がありそう。
一つのポイントは、練習するあたって三つのやり方があり、

  1. 遅く練習するときは、太極拳より遅く行う。
  2. 速く練習するときは、長拳より速く行う。
  3. 各動作を八卦掌の掌法と同じように行う。

ものなのだとか。各動作の間でも緩急があるんですが、この場合は全体の速さということのようで、特に僕たちはよりゆっくりと行い、易筋経の原理を意識してやるのがよい、のだそうです。まあそうですね。速く練習しようたって、すぐに中正が崩れちゃうからあんまり意味ないし。
また単操として取り出して易筋経の練功としてやったりしました。李先生の語り口は八卦掌と易筋経は同じ原理にもとづくんだというものですが、都合三回の易筋経の講習を通じて感じたのは、実態としては長年李先生が学んでこられた八卦掌の、特に走圏や掌法を習得する上でいくつもあるであろう単操の、エッセンスを精選して易筋経というかたちにまとめなおしたのだろうな、ということです。だから易筋経そのものが貴重なのではなく(いや貴重っちゃ貴重ですけど)、馬貴派八卦掌の核となるものがそこにあるというのが、これを学ぶ者にとっては垂涎の宝物だということではないかと思った次第です。相当な大盤振る舞いじゃなかろうかと。ありがたい話です。

おまけ

李先生に、対練で後日になって腕の下の筋肉が痛いんです、と話したら、それは間違ってないとの由。うーし、がんばんべえ。

追記(02/06):腰の感覚はまだまだ

夏目さんのブログ*1で、腰背の筋を伸ばす感覚について述べられています。うーん、なるほど。やはり僕はまだまだ身法が十分でないのだ、というのがよく分かります。僕の場合、使ってる感覚は多少あるんですが、伸ばすところまでいけてない、といったところでしょうか。後ろより前、下腹の感覚の方が強いっす。まあそれでも感覚出てきただけ進歩してきたというもの。先は長いです。楽しみ、楽しみ。

*1:http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2008/02/2-9f67.html