nomurahideto's blog

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歩く呼吸の伝統

鎌田茂雄『気の伝統−調息法を中心として』*1は、仏典から近代の藤田調和道までが射程に入った良書ですが、その中で歩行時の呼吸法について記した江戸後期の平野重誠(1790〜1867)について言及があります(pp.181-188)。なんでも、白隠禅師の弟子の東嶺から参禅錬丹の術を受けた天真一刀流の寺田五右衛門宗有の弟子の兵法者の白井鳩州から呼吸法を学んで医術の助けとしたのが平野重誠(桜寧室主人)なのだそうです。鎌田茂雄によればその「平野重誠の調息法で、もっとも特徴があるのは歩行時の呼吸法」であったそうで、次の一文が引用されています。

歩行には、気息を以て小腹(したはら)を牢紮(ひきしむる)やうにして、脚歩(あし)よりも小腹(したはら)まず進むが如くし、その面(かお)人に対し、眼(め)に外物(もの)を視(み)るときにも、心には必ず臍下(せいか)を視るの念(ねん)を、瞬時も忘失(ぼうしつ)することなければ、その外物と交(まじわ)るところの妄心自断(おのづからたえ)て、心識安定(こころおちつき)、陰陽和適(ととのう)ことを得る捷径(ちかみち)の法なり。

もちろん馬貴派では下盤の充実を重視するので、その点については検討の余地はありますが、ほぼ走圏の要領と同じと考えてよいでしょう。実におもしろい。
で、実際に原文を読んでみたいなと思ってたら、ありがたいことにいろいろとネット上で参照できるようです。まだ子細に検討したわけではありませんが、備忘録がわりにリンクなど。
国会図書館近代デジタルライブラリーには、明治44,5年に刊行された呼吸法に関する文献で、この『養性訣』に項目を立てて言及したものが三点ありました。感謝、感謝。ちなみに、『気の伝統』で取り上げられた白隠慧鶴・貝原益軒平田篤胤・平野重誠は共通して参照されています*2

なお、早稲田大学の画像データベースで『養性訣』の江戸刊本が見れます。

*1:[asin:4409410628:detail]

*2:が、同書では明治期のこうした著作についての言及はなし。