nomurahideto's blog

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身も蓋もない大乗的八卦掌

いよいよ始まりましたリーズブートキャンプ、初日の今日は1年以上の経験者向けの講習会でした。夏同様毎回レポートしていきますが、何せ一人の記憶では限界があります。ご参加のみなさまがそれぞれブログで書いてくださればありがたく*1、そうでなくとも随時コメントくださればさいわいです。補足・訂正その他もろもろお待ちしております。群盲象をなでなで派でいきませんか?(^^ゞ
 

さて、八卦掌の練功には小乗の側面と大乗の側面があり、これまで教えてきた単純な動作から複雑な技術へと発展させていくことが小乗の練功だとしたら、複雑な技術から単純な動作に収斂させていくのが大乗の練功なのだとか。それでポイントとして李先生があげられたのは、何と「手」の動作なのでした。
「搭手腕中求」(搭手*2は腕の中に求む)がキーワードとのことで、手の変化は身体の変化の中でもっとも簡単だが、同時にもっとも速い変化であるため、この手の変化が非常に重要なのだそうです。
小乗の練功は勝負にこだわるが、大乗の練功は生死にこだわる。安身立命を実現するのが大乗の練功なのだと、実際に見せてくれたのは、手を合わせた一瞬の間に手が変化して相手を襲うというおっとろしいものなのでした(^◇^;) いやー、僕はてっきり勝負なんかは小乗だ、なんて言われるので、そうかやっぱり大乗は養生だよなと思って通訳してたら、それは間違いで、思いっきり身も蓋もなく生死といえば、本当の生き死になのでした。
自分の生命を安全にするには、相手の生命を消してしまえばいい。勝ち負け言うてないでとっととタマ殺れや〜てことですかぁ。だ、大乗ってそんな教えだっけ。。。いや、もちろん小乗大乗は喩えですから別に問題ないわけですが。あんまりそのまんまだったので、むしろ感動しました。僕には無理そうですが。養生万歳。
閑話休題。
そんなわけで、88式を手の変化に注意しつつ、一通り行ったのでしたが、やはりみんなまだまだで。というのも、その手の変化によって生死が決まるためには、何が必要かといえば、身体は変化しないこと、なのでした。つまり身法の要求を満たした状態において、手が変化してこそ意味があるわけです。
では、身法の要求のポイントは何か、というとそれは、「対称」性なのでした。

対称性身体技法

どうして東アジア一般の健康法や中国武術の標準的な練功法として馬歩が存在するのか。一般にはそれは下盤(下半身)を鍛えるためと考えられていますが、そうではないもっと重要な目的がある、と李先生は言われます。それが、対称性の獲得、なのでした。例えば、馬歩の場合は、その名の通り、馬に乗っているかのように行います。そうすると、身体を中心に向かって一つに合わせなければ、馬に振り落とされるでしょう。また、姿勢が斜めになってしまっていても同じこと。「中正」を保つ、それが対称性の基本にあるわけです。
ではなぜ、対称性が必要なのか。それは対称性が獲得された身体は中正の状態にあるので気血が充実し、それによって、身体が「飽満」な状態になります。そうなることで、はじめて力が「周遍」する、あまねく行き渡るようになります。そうなって、はじめて八卦掌の技は生死を分かつものになる、ということなのでした。
対称→飽満→周遍という過程で、練功が進むというわけです。
これは走圏でも同じだよ、と李先生が龍形走圏を見せてくれました。「含胸亀背下端腰」をして身体を捻ると、確かに、背中と腰がぐわとふくらんでいます。すげー。充実、というよりも確かに飽満、と表現した方がしっくりきます。夏の講習会の懇親会のときに、人体を袋に喩えて、普通に捻れば細くなるけど、身体を一つに合わせて捻るとふくらむんだと、おしぼりで枝豆のからをくるんで説明していただいたのを思い出しました。
そこで上述の走圏の要求はこうとも言うんだ、として、「空胸緊背臂自長」(胸を空じ背を緊くし臂自ら長し)という一句を教わったのでした。含胸亀背によって腕は自然と伸びる、ということで、手の変化の源はどこかというのが示された一句だと思った次第です。

小乗と大乗の別の見方

岩戸さんによれば、小乗=走圏、大乗=個々の技、ではないかとの由。確かに以前李先生は、小乗・大乗という言葉こそ使われないものの、そういう枠組みを示されたことはありました。それも正しい、というかより大きくはそういう話なのだと思います。ただ今回のキモはその手前の生々しいところだったのではないか、というのが僕の見立てです。両方念頭におくべきかと。

カリキュラムメモ

  1. 88式(特に手の動作に注意して)
    1. 88式の単操
      1. 大起式(双刀を抜くように)
      2. 挑打
      3. 穿掌(以下勝手に命名)
        1. 連続穿掌
        2. 球穿掌
        3. 球探掌
        4. 球穿掌×球探掌
  2. 龍形走圏
  3. 単換掌(古式ということになるのかな?抱えるのがないやつ)
  4. 双換掌
    1. 双換掌の単操
      1. 双撞掌

追記(01/25):小乗と大乗の違い

コメント欄の議論で、書き落としていたことを思い出しました。
小乗は具体的な技術の習得なので理解しやすいが、大乗は考え方自体を変えるものなので理解するのが難しい、と最初に言われたのでした。実践していることそれ自体は小乗での行為と変わらないかむしろ簡単な動作である、ということでした。
これって、練功ができてきたら技なんかどうでもいいんだ、と李先生が言われてたことありましたが、それと同じことですね。そのように語ることが実に禅や老荘なのであります。しかも一回切りで終わらず何度も繰り返すあたり、かなり性命双修です。すばらしい。

追記(01/28):結果

李先生の総括によると、やっぱり元エントリの解釈でよかったようです。ただ練習が進むとまた別の角度から説明がなされるんじゃないかと思います。動作は明確でぶれないかわりに解釈で幾重にもゆさぶる、といったところではないかと。

*1:[http://maguibagua.ring.hatena.ne.jp/:title=ウェブリング]へのご参加もお待ちしています。

*2:対練のときに手を合わせる動作。武術の専門用語みたい。