Under the hazymoon

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自然の再演と超克

ブートキャンプ4日目は初心者向け講習会パート3でした。優先順位があるのか分かりませんが、今日は特に下盤(足)の要求について強調され、それ用の練習をしました。あと今日は多めに教えますよ、とのお言葉通り怒濤の探掌の変化練習が。お、おいつけない。
 

カリキュラム

  1. 走圏
    1. 龍形走圏
    2. 熊形走圏
      1. まっすぐ熊形
  2. 単換掌
    1. 扣擺歩の単操
  3. 探掌
    1. 単探掌
    2. 双探掌
    3. 連探掌
    4. 回身探掌
    5. 順身探掌
    6. 進退探掌(って名前でいいのかな?)

 
ここ数回、龍形から入っているのですが、今日も龍形走圏から単換掌へと練習が進んでいきました。で、やはり基本中の基本は中正だよ、ということで次のお言葉をいただきました。曰く中正とは「无過不及、至簡至難。」だと。速い話、例えば単換掌の扣擺歩のときに、身体が前方につんのめっても、後方に遅れてきてもダメで、きちんと垂直にまっすぐ立っている状態が保たれていなきゃだめだと。
そして、これまで中正に関しては、主に養生の方面からの解説が主でしたが、今回は、実戦の方面からの解説がなされました。中正を保った状態はもっとも変化がしやすい状態なのだそうです。つまり相手と対したとき、次から次へと変化して戦うためには中正が保たれていなくてはいけない、探掌で突いたはいいが身体が前のめってしまっていたら、突いた探掌が相手にかわされたとき、次にどうすればいいのか?というわけです。
また実戦においてもっとも効果の高いのが龍形の構えだそうで、両手を中正に構えることで頭や体幹部を敵から守り(一横一竪三点水)、相手に対して斜めに位置しつつ移動することで下半身の急所も足で守り(斜身繞歩)、かたといっていつでも攻撃に転ぜられるよう身体をかたくせずに気力を充実させる(外鬆内合)といった塩梅です。
 

龍虎を一身に体現する

「如龍似虎」のように八卦掌は行うのです、と李先生。龍は自由自在に変化する様、対して虎(または熊)は今にも発さんと力を充満させてどっしり構える様、この両者を同時に体現する、というのが八卦掌の境地なのだとか。おお、これは仮面ライダーV3ではないですか。力と技のダブルタイフーンだあ!そうかあの変身ポーズは龍形だったのね(違

単換掌は人間の本性にもとづく

なるほどなあ、と改めて思ったのが、単換掌の擺歩して馬歩になったときの構えです。手のかたちがなぜああなのか、それは人間が敵に攻撃されたとき、咄嗟に両手をあげて避けようとする、そのかたちなのだそうです。身体をもっとも安全に守る本能のかたちなのだとか。ここに自然を人工的に再演するという中国思想の基本形態を認めることができる、というのはこれまで何度か書いてきました。
しかし、あっと気づいたのは、そこで終わってない、ということなんですね。最大の防御は攻撃である、として、その防御のかたちは、あっという間に攻撃のかたちに変化して相手を襲う。まさに天命は我に在り、と自らの意志が本能を超克していく、これもまた六朝以降にみられる中国思想の重要な思考形式で、ここから儒教の朱子学にしろ道教の錬金術にしろ、生まれてきたといってよい。ま、勝手な読み込みなんですが、単換掌には中国哲学2500年の発展も込められている、と。どっとはらい

追記(01/31):

「如龍似虎」に関して夏目さんが、これを単なる比喩とはせず、

現代の僕は、信じるでもなく信じないでもない両義的な態度と精神で受け取って、試している。それが面白い

と書かれています*1。いや、まさにその通りで、この態度はずっと悩んでて、id:moroshigekiさんやid:monodoiさんたちとも話してる研究上の対象と方法論とともに強くリンクしています。しみじみ、おもしろい。

*1:http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2008/01/post-74db.html