Under the hazymoon

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からだの文化―修行と身体像―1日目

学習院大学で開催された研究集会*1に報告者として参加してきました。
夏目さんの「マンガにおける修行身体イメージの伝承」では、戦前の武道物が戦後に野球物にずれ込んだ経緯、そして現代の格闘マンガとその時代性までを概観する幅広いものでした。バトル物といわれるカテゴリを考える上で、修行物という角度から見直すというのはけっこうおもしろいんじゃないかと思った次第。
戦前のマンガにおける神的人物から巻物によって秘伝が伝授される定型については、北條さんが兵法の密教的伝承の型を引き受けているという指摘はおもしろかったです*2
僕は一方で、現在のジャンプのバトルマンガのほとんどに認められる「超越的な父(たまに母)から力を遺伝的に受け継いでいることが主人公の強さの根源」というモチーフを連想していました。正直、収入の多寡が偏差値の高下に対応する文化資本ロワイヤルな世相を反映しているからか、ないしジャンプバトルマンガの読者層が一回りしたため親の地位向上が要請されているからかはともかくとして、なにその厨二病と思ってたのですが、実はある種の先祖返りであったかと思うとおもしろくなりました。
もろさんの「仏教の修行マニュアルに見る「身体」イメージ−『天台小止観』を中心に−」では、モーションキャプチャにありがちな近代的身体像である、測定される身体とは異なる、普通の目には見えない、内なる身体像の理解をもとに伝統的な修行論を読み解こうという野心的な試みでした。まったく僕も賛同する、というか同じことをやっているもので、とてもおもしろかったです。
特に重要なのは、瞑想を修行生活トータルで位置づけてみせたところで、夢占いやサイコロ占いが修行の前提にあるというのは興味深かった。そこまでふくめておそらく瞑想修行のパッケージとして仏教を越えて広く流通しているはずだからです。
また佐伯先生が、声明・オペラ・能のうたいでの身体イメージの違いを指摘されたのも、明日の僕の報告とも関係するもので、刺激になりました。
そしてワークショップでは、李先生による馬貴派八卦掌と易筋経の体験教室です。前二つの報告で話題となった、伝統的な修行や身体像を実際に体験できる、という仕立てです。もちろんそれが本当に”伝統”的なのか議論の余地はじゅうぶんあるわけですが、だいたいフィールドワークや参与観察はそうしたものですから、身体論に興味があって参加された方には得る物があったのではないかと思います。まさに半日読書半日静坐の全方位学習でした。楽しかった〜。

夏目さんもブログに書かれてます*3

*1:http://www.gakushuin.ac.jp/univ/g-hum/cult/05news.html

*2:http://blog.goo.ne.jp/khojo0761/e/dfacb96113ef8ca00ce127ff7f2c89a7

*3:http://blogs.itmedia.co.jp/natsume/2010/07/post-99f5.html