Under the hazymoon

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布鞋の秘密

昼間に前門で布鞋を買ったその夜の練習のことでした。。。

布鞋の話が出たのもこれも何かの縁かもしれないね、そう李老師は言われると、古ぼけた一足の布鞋を僕たちの前に持ってきた。これは馬貴派で代々受け継がれてきた布鞋なんだよ、そう言うと水に浸した紙を床にのばして、L老師はその紙の上で走圏を始めた。一歩また一歩と回っていくのに紙がまったく破れもしない。平起平落といった歩法が完璧にこなせるとはこういうことなのか。驚いて見入っていると、布鞋の靴跡がなにやら複雑な模様になっている。さっき手にとって見たときには普通の靴底だったはずなのに。目を凝らしてみると、それは模様ではなくて漢字だった。ちょうど半周ほど回ったところだった老師は、僕と目を合わせると得意そうにうなずいた。これが失伝した董海川の歌訣なんだ。今伝わる歌訣とは全く異なるもので、それこそが馬貴派の秘伝となっている。そう秘密を明かしてくれた李老師は、布鞋を脱いでIさんに渡してこう告げた。今からそこに書かれた秘伝を教えよう。
僕はそこで部屋を出たので、その秘伝が何だったかは分からない。教わった秘伝が何だったのか、Iさんは僕には教えてくれなかった。しかし初心者の僕にも次の日の練習から、Iさんの走圏や掌法がまったくといっていいほど変わってしまったことに気づいた。そうIさんに伝えると、それが分かるってことは君もがんばって練習してるってことだよとほほえんでくれた。
秘伝が浮き出た紙は水が乾くと同時に消えてしまった。本来は紙に特殊な溶液を塗るときちんと拓本が取れるんだそうだ。Iさんはそんな大切なものは受け取れないといったんは返したのだけど、L老師は私はもうすべて記録してあるからと、結局、布鞋を帰国間際になって再びIさんに授けていた。そして僕には、そのときが来たら彼から習うといい、そう言ってくれたのだった。。。

とかいうネタって、武侠小説にはけっこうあったりしません?と言ったら、とりあえず李先生にもいわとさんにも受けてました。本気にする人もいたりして(爆

実際のところは、布鞋に関してはいわとさんは本当に李先生から先生が前履いてたやつをもらってました。ちぇっうらやましい。布鞋は中国武術に向いてるそうですが、今の自分が練功に使うと一週間持つか怪しいんだそうで、それで使ってないんだとか。武術に向いてるというのは、布鞋は靴底が布を縫い固めたものなので、足にフィットするのにスポーツシューズなんかより固いんですね。なので、相手を蹴るときに有効なんだとか。ひええ、そんな恐ろしい用途があったんすか。

でも帰国後に布鞋を板張りの床で試したらつるりんとすべって使い物になりませんでしたとさ。どっとはらい